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JR福知山線事故 メモ2 [社会を考える]

 JR福知山線事故と2000年3月の日比谷線事故は共通点があり,カーブでの脱線事故であったことだ。これについてちょっと考えてみた。2000年3月に国会で与野党の議員が事故について,運輸省の安富正文鉄道局長を呼び出して,一応は追及していた。以下はその一部のやり取りである。 

第147回国会参議院予算委(2000年3月13日)議事録から
登場人物の役職(当時)
 宮本岳志  → 参院議員
 安富正文  → 運輸省鉄道局長
 二階堂俊博 → 運輸大臣

宮本岳志君 ぜひ頑張っていただきたいと思います。次に、脱線防止ガードレールについてお伺いしたい。事故箇所のカーブは半径160メーター、営団の設置基準は半径140メーターと聞いておりますが、1951年の営団の内規では半径何メートルでしたか。
政府参考人(安富正文君) お答えいたします。営団地下鉄は昭和26年、丸ノ内線建設に際しまして、曲線部における外側レールの摩耗を防止するために、半径200メートル以下の曲線箇所に内側レールに沿って摩耗防止ガードレールを設置するということを基準としておりました。その当時は摩耗防止ガードレールと呼んでおりますが、これは当然脱線防止にもつながるものでございます。
宮本岳志君 これが年々緩められてきて160メーターから150メーターに緩められたのは何年ですか。
政府参考人(安富正文君) 先ほども申しましたように、昭和26年当時200メートルでございましたが、その後昭和29年にこれを180メートル以下ということに改めております。それから、さらに昭和33年に曲線半径180メートル以下から160メートル以下、それから昭和36年にこれを160メートル以下から150メートル以下、さらに昭和43年に150メートル以下から140メートル以下にそれぞれ設置基準を段階的に引き下げて、今日に至っております。

※解説) 日比谷線事故現場のカーブ 160m

※解説) 営団内規で脱線防止レールの設置基準を連続的に緩めた経緯と日比谷線事故発生

西暦   設置基準    出来事
1951   半径200m以下 丸ノ内線建設
1954   半径180m以下 設置基準を20m緩める
1958   半径160m以下 設置基準をさらに20m緩める(計40m)
1959   半径160m以下 日比谷線建設
1961   半径150m以下 設置基準をさらに10m緩める(計50m)
1964   半径150m以下 恵比寿・中目黒間開通
1968   半径140m以下 設置基準をさらに10m緩める(計60m)
2000   半径140m以下 日比谷線事故発生

宮本岳志君 事故現場の恵比寿―中目黒間の開通は何年ですか。
政府参考人(安富正文君) 営団日比谷線につきましては、昭和34年に工事着手以来、順次開業してきておりますが、当該恵比寿―中目黒間につきましては、昭和39年7月22日の開業となっております。
宮本岳志君 わずか3年前まではつけるという基準になっていたものを規制を弱めてつけていなかった、そしてその後も結局140メーターにまで引き下げられたと。この緩和の理由は何でしょうか。
政府参考人(安富正文君) お答えいたします。営団地下鉄では、脱線防止機能を有するこのガードレールにつきまして車輪の踏面、いわゆる車輪とレールが接する面でございますが、その面の形状の改善、改良あるいはレールの塗油、塗油と申しますのはレールに油を吹きつける器械がございますが、そのレール塗油による摩擦係数の低下等の改善状況を踏まえまして、そういう設置基準を段階的に改正してきたということを聞いております。
宮本岳志君 私が問いたいのは、そもそも運輸省はこの基準に責任を持ってきたのかと。運輸省の規則では明確に何メートル以下はつけるようにとなっておりますか。
政府参考人(安富正文君) 運輸省の構造規則の中には具体的な数字は示しておりません。急曲線あるいは急勾配の曲線の部分につきまして脱線防止ガードレールをつけるようにということで、それぞれの各事業者における車両の性能あるいは運転速度等を勘案して各事業者が決めているものでございます。
宮本岳志君 きょうは資料もおつくりして配ってありますけれども、具体的な数字はない、そしてばらつきがこれほどあるというのが今の実情なんですね。そこなんですね。つまり事業者任せにしていると。ここを運輸省がきっちりと何メートル以内は必ずガードレールをつけなければならないと責任を持つべきだと思いますが、運輸大臣、いかがですか。

※解説)脱線防止レールの設置基準について,運輸省の基準はなくて,事業者の自由である。

国務大臣(二階俊博君) 先ほども御答弁申し上げましたとおり、この問題につきましても、私どもは今回の事故を機会に専門家等の御意見も十分聴取した上でこの問題についての基準をどう設けるかということも念頭に置いて検討してまいりたいということを考えております。


第147回国会参院交通・情報通信委(2000年3月14日)議事録から
登場人物 日笠勝之 → 参院議員(当時)

日笠勝之君 ぜひひとつ、国が出資しておる鉄道業者でございますから、きちっとした対応を、これがまたいろんなほかの鉄道業者への大きな、原因究明が次なる安全策を講ずる大きな手だてとなるわけでございますから、しっかりとした原因究明を要請するところでございます。そこで、脱線防止ガードといういわゆる脱線を防止するサブの線路といいましょうか、これをつけるのが事故を防ぐんだと、こういうことをいろいろ言われております。一般論的にはどうなっておりますか、この脱線防止ガードの設置基準、それから営団はどうなっておったのか、以上2点。一般論としての脱線防止ガードの設置基準と、営団はどうなっておったか、この2つをお聞きしたいと思います。
政府参考人(安富正文君) 御指摘の脱線防止ガードでございますが、まず法令的には、普通鉄道構造規則及びその告示において、曲線半径の小さい曲線または急勾配の区間にある曲線についてこれらを設置することということが規定されております。具体的には、各鉄道事業者が曲線における運転速度であるとか車両性能、線路状況等を勘案して個別に定めているところでございます。具体的に申しますと、例えばJR各社でございますと半径250メートル未満の曲線に設置するとか、あるいは各市交ですと、横浜市交ですと約160メートル以下であるとか、名古屋市交ですと200メートル。民鉄にいきますと、例えばでございますが、東武ですと半径250メートル、京王ですと300メートルと、幾つかいろいろ例示がございますが、そういう形で現在各鉄道事業者ごとに定めているものでございます。営団の場合を申しますと、従来から140メートルということで定めております。これはもちろん過去には200メートルとか180とかいろいろございましたが、直近では140メートル以下ということにしております。これに従って営団としては従来からガードレールを設置してきたわけですが、今回事故を起こしたと、こういう教訓から、昨日でございますが、営団においてはガードレールの設置基準を従来の半径140メートル以下から、当面の緊急対策として半径160メートルの箇所についてすべてにガードレールを設置するということを決定いたしまして、これは1カ月ほど全敷設するのにかかるかと思いますが、鋭意設置工事に着手しているところでございます。

解説※ 事業者ごとに自由に判断できる脱線防止レール設置基準の実態
事業者     脱線防止レール設置基準
東急              450m以下
小田急            400m以下
京王                 300m以下
JR各社               250m以下
名古屋市交通局         200m以下
横浜市交通局                 160m以下
営団地下鉄                      140m以下
安富正文鉄道局長は東急,小田急については言及していないので,私が表に追加してみた。

 【私の考え】
 私の考えは下の表にしてみた。脱線防止レールの設置基準を東急,小田急程度まで厳しくして,各社一律に実施さえすれば,脱線した場合にも大きな事故にならないのでは? と思うのである。

表 脱線防止レールの設置基準と事故現場のレール半径
事業者      脱線防止レールの設置基準     事故現場のレール
東急                  半径450m以下
小田急                       半径400m以下
JR西                 半径 300m以下      半径350m
営団                  半径 140m以下      半径160m
 

 


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前参議院議員 宮本岳志

 メイ様、突然の書き込み、驚かないでくださいませ。私は上記に引用していただいている。2000年3月13日の質問者、宮本岳志本人です。「なりすまし」ではない証拠に、私のホームページ(http://www.miyamoto-net.net/)の日記帳「今日のタックル」に、このblogに書き込んだことを紹介しますので、よければご覧下さい。

 私も、今回の福知山線事故のニュースを聞いてすぐ、蘇ったのは2000年の営団地下鉄日比谷線の事故のことでした。あのときは5名の尊い命が奪われたのですが、今回の事故を見て、あのときの教訓が生かされていないことに、歯ぎしりする思いです。

 この時の私の質問で、「脱線防止ガード」の設置基準が鉄道事業者ごとにバラバラであり、「国の基準すらない」ということが明らかになりました。私の質問に対して当時の二階運輸大臣は、はじめて「この問題についての基準をどう設けるかということも念頭に置いて検討してまいりたい」と答弁、その後「緊急措置」というかたちで「R200以下のカーブには脱線防止ガードを設置すること」が国基準として定められたのです。

 ところが、これはあくまで「緊急措置」であって、「それで絶対大丈夫」というような基準ではありませんでした。にもかかわらずJRなどは国基準を上回る「R250以下に設置している」ことをもって、まるで十分すぎるほどやっているかのような認識でいたのです。

 今回の事故は何と言っても速度オーバーが主要な事故原因であり、このような速度超過を引き起こしたダイヤの問題、運転手への「日勤教育」などの問題、さらには「ATSーP」の設置の遅れの問題など、徹底究明すべき問題は多くあり、「脱線防止ガードがあれば防げた」と言い切れるかどうかは定かではありませんが、すくなくとも現場にガードがなかったことは事実です。

 メイ様おっしゃるとおり「脱線防止レールの設置基準を東急,小田急程度まで厳しくして,各社一律に実施」させることは非常に大切なことであり、「R200以下」という「緊急措置」のみで放置してきた国=国土交通省の責任は免れ得ないと考えます。私は当時、事故後5日目ぐらいに、すぐ参議院予算委員会でのこの質問に立ちました。今回の事故に当たって議席がないのが悔やまれます。今後ともどうぞ積極的なご提案を期待しております。
by 前参議院議員 宮本岳志 (2005-06-26 21:17) 

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