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「心が弱くなる」仕事 [仕事を考える]

 私が初めての仕事は、事件・事故記事を書くことと、お悔やみ記事を書くことであった。私は専用の机が与えられず(同期の記者もやはり与えられなかった)、机のコーナーのようなところで電話やワープロを使って仕事をしていた。そのときの感想は「これが、仕事か!」とあきれたのと、また、「これは心が弱くなる仕事だな」と思ったことである。

 思い返すと、「これが、仕事か!」と思ったのは、単純作業の繰り返しであることにあきれたのだ。電話を入れて、確認をするのを繰り返す。ただこれだけである。高等だったり立派だったりする仕事でも何でもない。むしろ簡単な仕事である。

 もう1つの「これは心が弱くなる仕事だな」と思ったのは、なぜそう思ったのか、しばらく分からなかった。よく考えたこともなかったからである。

 私はずっと年上の警察官や中高年の一般市民が、新聞社の取材というだけで、電話口に急いで出て、取材に答えるというのが、実に不思議だった。私は電話取材というのは失礼で、どんなときも出向いて取材するのが最低限の礼儀だと思ったのだが、小さい記事をたくさん掲載するような新聞編集のやり方では、電話取材に頼らざる得ない。私は業務命令で電話取材するように指導された。

 一般市民は、新聞社の取材に答える義務というのは、まったくない。ついでいうと、公務員にも基本的にはない。公務執行妨害罪というのがあるのだから、新聞社の取材に答えたくなければ、公務員は「業務で忙しいので、取材にはお答えできません。公務執行中です」といえばよい(まあ、ほとんどの公務員が業務で忙しいという状態にないので、取材を受けざる得ない状況にあるが・・・・)。

 したがって、新聞社の取材というのは、ただネームバリューにモノを言わせて、ある意味、書くぞと(私はそんなことは言ったことはないが)暗黙の脅しを前提に、取材しているのである。これは礼儀正しい記者であっても、ヤクザな記者であっても、基本は同じである。

 もっと簡単に述べると、優位な立場に立って、劣位の者から情報を取っているのである。ケースによっては、社会的制裁を加える。それが正しいものかどうかというのがあるだろうが、いわゆる、いじめる側になるわけである。

 いじめ、というのは心が弱い人間がすることである。私はどうも、直感的に、そのことに気づいて、「心が弱くなる仕事だな」と思ったようなのである。


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