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妬みの発作

 大野信頼の「ずるい人を寄せ付けない方法」というコラムが興味深い。嫉妬というのは格下の者が優れていたことに対して生じる動物的な発作である。対象に有害な作用を及ぼすという。いわば嫉妬の毒気であろう。

 よくある話として、部下に嫉妬する上司がいて、何とも見苦しい。部下は嫉妬の毒気に当たることで、退職したり引きこもりになったりするらしい。嫉妬されやすい真摯な者に対して、敢えて物欲を持つ、身の回りを整理整頓する、敢えて責任を取らないという具体策を示している。

 武者小路実篤の『仏陀』にも嫉妬のケースがある。教祖の妻に求愛された弟子がその求愛を拒んだにもかかわらず、教祖の嫉妬を買った。教祖は弟子を滅ぼすため、修行と称して辻斬りをさせ、弟子は殺人鬼になった。仏陀が何とか辻斬りをやめさせ弟子は仏門に入るが、ある日、遺族たちに殺されてしまう。また仏陀は大きな宗門を率いるものの、別派を率いるいとこが嫉妬心を燃やし、何度か暗殺されそうになる。仏陀は相手にしないので、いとこは自滅して死んでしまう。

 

 努力も重要だろうが、環境を変えるのも重要である。理工系の研究者が日本を飛び出して、西欧、特にアメリカの大学院に進み、そこで働き、後年、ノーベル賞を受賞するケースを見ると、研究者として重要な若いときに、嫉妬と粗悪な条件でつぶされないという決意をしたからだろう。

 

 そういえば同級生にアメリカの有名大で3年も研究留学したのに高級住宅地に家を建てて、その後大学も退職して自営を始めた男がいた。金づまりらしい。金の話ばかり出てくる。そして嫉妬心のようなものも感じる。医学者なのだから研究留学をきっかけに日米を行き来して研究を続ければいいのにと思ったものだが、物欲を選んだらしい。家族関係もあったのだろうが何とももったいない話である。
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