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私語激減 [仕事を考える]

 私は背丈があるので着席すると、机のパーティション越しに職場を見渡すことができる。

 中高年女性たちが私語を始めると、パーティション越しに発生源に目を向けてしまう。うるさいな、静かにしてくれ、愚か者たちめという非難を込めているのだが、なるべく感情を出さなかった。

 彼女らは職場外では注目や関心を得られることがほとんどないらしく、私の視線が嬉しくなって私語を継続したり、男言葉や下品な表現を使ったり、哄笑爆笑したり、ドタバタと小走りしたり、若作りの格好してしまうようだ。

 こうしたメカニズムを壊すため、私はパーティションに試みにマスキングを施し、自分の視線を与えないようにした。彼女からすると、私の視線はゼロとなる。すると私語の継続時間、声量や、小走りなどが顕著に減少した。彼女らは職場外では不活発であり、職場内でも不活発な自然体に戻ったのである。

 この数カ月の間、自分の視線が彼女らの私語、哄笑爆笑のメカニズムを助長していたかと思うと残念である。

 彼女らは4人とも全員、努力をしているわけでもなく、能力が高いわけでなく、実績を上げているわけでもなく、資格があるわけでもなく、教養が高いわけでもなく、女性として美貌でもなく、若いわけでもない人たちである。こうした人たちは職場外では不活発で自信がなく、注目や関心を得られることはほとんどないらしい。

 注目や関心を得る場としては家庭、友人知人、趣味、研究、ボランティア、スポーツなど幾らでもあるばずである。彼女らが注目や関心を得ようとする場として、職場を選んだのは職場では必ず人間がいるからであろう。彼女らは職場外ではほとんど無視されるような人間であり、それが4人と集団となったのである。その証拠に同じフロアには他の女性たちがいて、私語もするのだがそれも小規模で迷惑なほどではないのである。
 
 会社は部課を減らし総務に統合させた。だめな中高年女性たちを総務部に集めたのだろう。私語が放置されているのはそのためであろう。

 人間というのは虫のいいことを考えがちである。努力せずに成果が得られないか。棚からぼた餅がないか、リスクを取らず機会を得られないか、投資せずリターンを得られないか。人生は棚からぼた餅的なこともある。しかし努力が原因でかえって失敗することもある。

 注目や関心を得ようと思わず、実質や実利を取るという生き方もある。経済的利益や安全を重視したやり方である。優れた経営者は脚光を浴びることを敢えて避け、どんどん実績を上げていく。マスコミの取材や受賞の話が持ち掛けられると固辞してしまう。そうして引退時や後継者決定時、ようやく登場する。まことに賢いやり方で、参考になるだろう。どうやら注目や関心と、実質や実利というのはトレードオフの関係らしい。
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